当社は、この度、名古屋市立大学薬学系研究科病態生化学分野(築地仁美講師、以下「病態生化学」)と、筋委縮性側策硬化症~{*1}(以下「ALS」)の新規治療薬の創出に向けた初期探索研究を開始しましたのでお知らせいたします。 

 

ALSは、大脳や脊髄にある運動神経細胞が変性、脱落し、全身の筋肉の麻痺をきたす原因不明の神経変性疾患です。この病気は主に中年期以降に発症し、数年以内に呼吸筋の麻痺のため、人工呼吸器の補助無しに生命を維持できなくなる難病です。原因解明と治療法の開発が強く望まれていますが、進行を遅らせる治療の開発は徐々に進んでいるものの、根治的な治療法はまだ確立されていません。

 

病態生化学は、ALSの病態解明と新規治療法開発に取り組んでおり、ALS病態を細胞レベルで再現するモデルを構築しています。病態モデル細胞を用いると、病態機序に基づいた治療薬スクリーニングが可能になり、ALS治療薬を効率的に探索できると期待できます。

 

当社と病態生化学は共同で、病態モデル細胞をベースにした薬剤スクリーニング系を用い、当社保有の化合物ライブラリーから、ALSの新規創薬標的に対するシード化合物~{*2}の探索を行います。

 

当社は、病態生化学が積み上げた知識や技術と、当社が有する幅広い創薬研究の経験を融合し、産学連携の下で創薬研究を加速することにより、ALSに対する新たな治療薬の創出を目指します。

 

 

【用語説明】

~{*1}筋萎縮性側索硬化症(ALS: amyotrophic lateral sclerosis)

ALS は運動神経細胞が選択的に侵される神経変性疾患であり、年間におよそ 10 万人に 1~2 人の確率で発症するとされ、日本にも約1万人の患者がいるとされています。多くは家族歴のない孤発性ですが、約 10%は遺伝性であり複数の変異遺伝子が同定されています。現在有効な治療法はなく、早期の治療法・治療薬開発が待ち望まれています。

 

~{*2}シード化合物

ターゲットとなる創薬標的分子と結合する化合物のことです。医薬品にするには、「水に溶ける」、「体内で安定である」、「細胞に取り込まれる」といった条件を満たさなければならず、シード化合物の構造を少しずつ変えて、このような条件に合う化合物を探します。

 

 

以上