当社は、この度、国立大学法人長崎大学~{※1}(感染症共同研究拠点~{※2}/熱帯医学研究所~{※3}:安田二朗教授および櫻井康晃助教)との間で、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」)に対する新規治療薬の創出を目指した共同研究を開始しましたのでお知らせいたします。

COVID-19は現在、世界的規模で公衆衛生上の脅威となっており、その治療薬の開発は喫緊に取り組むべき世界の最重要課題となっています。しかしながら現時点でCOVID-19治療薬として国内外で承認された医薬品は米ギリアド・サイエンシズ社が開発した「レムデシビル」など、ごくわずかしかありません。そのような状況を踏まえ、当社は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖を強力に阻害し、病気の発症や重症化を抑制する治療薬を創出すべく、長崎大学との産学連携を推進することによりCOVID-19研究に取り組むことといたしました。

SARS-CoV-2を用いた感染実験は、「バイオセーフティ―レベル(BSL)*4-3」の取り扱いとされていることから、COVID-19治療薬の研究にはウイルス実験が可能な共同研究パートナーが必須となります。長崎大学は、熱帯医学・感染症分野の研究で日本のみならず世界的にも先導的な立場にあり、また、安田教授および櫻井助教は、エボラウイルス病等の新興感染症の研究で卓越した研究実績を有しております。さらに、長崎大学では現在、BSL-4施設の整備が進められており、世界レベルの感染症研究や治療薬の開発に貢献することを目指しています。

本共同研究により、長崎大学が有するウイルスに対する細胞および動物を対象とした評価系ならびに新興感染症の研究で先行する叡知と、当社が有する低分子化合物の創薬研究に関する様々な知見と技術ノウハウを融合し、COVID-19に対する新たな治療薬の早期創出を目指します。

以上

【用語説明】

*1国立大学法人長崎大学
長崎大学は、1949年(昭和24年)に設置された国立総合大学です。1950-60年代にキャンパスの移転・統合が行われ、坂本キャンパスに医学系学部・研究所(医学部、歯学部、長崎大学病院、熱帯医学研究所)が所在しております。長崎大学はその地理的・歴史的背景から、熱帯医学・感染症、放射線医療科学分野における卓越した実績を有しており、感染症領域において日本では他の追随を許さない豊富な研究の蓄積と研究者陣容を擁し、国内外に名をとどろかす感染症の教育研究拠点となっています。

長崎大学では、COVID-19に対して、各種研究活動、啓蒙活動、支援活動に取り組んでいます。2020年3月、安田二朗教授、吉川禄助助教らのグループは、SARS-CoV-2を約10分で検出できるウイルス遺伝子検査システムを確立し、長崎大学と長崎県が協力して臨床研究を開始することを発表しました。

*2長崎大学感染症共同研究拠点

長崎大学感染症共同研究拠点は、BSL-4施設を整備して感染症研究や人材育成を推進することを目的として2017年4月に創設されました。例えばエボラウイルスや天然痘ウイルスなどは最も危険度の高いBSL-4に分類され、極めて厳重な封じ込め構造を持つBSL-4施設でしか取り扱えませんが、現在日本で稼働しているBSL-4施設はグローブボックス型実験室の1ヵ所のみです。感染症共同研究拠点は、日本はもとより世界の感染症を克服するために、その中核となるBSL-4施設を稼働することにより、長崎、日本と世界の安全・安心に寄与する、全日本感染症共同研究拠点として機能することを目指しています。

現在感染症共同研究拠点で整備が進められているBSL-4施設は、実験者が宇宙服型の陽圧気密防護服を装着し、前面開放型のセーフティーキャビネットで比較的自由に操作できる「スーツ型実験室(Box in Boxタイプ)」と呼ばれる世界標準の設備が計画されています。

*3長崎大学熱帯医学研究所

熱帯医学研究所は、1942年に長崎医科大学付属東亜風土病研究所として開設されました。1967年に長崎大学附置熱帯医学研究所となり、日本の熱帯医学研究を中心的に担っています。熱帯病の中でも最も重要な領域を占める感染症を主とした疾病と、これに随伴する健康に関する諸問題を克服することを目指し、関連機関と協力して、(1)熱帯医学及び国際保健における先導的研究、(2)研究成果の応用による熱帯病の防圧ならびに健康増進への国際貢献、(3)上記にかかわる研究者と専門家の育成、の達成を目標としています。

*4バイオセーフティ―レベル(BSL)
バイオセーフティレベルとは、 細菌・ウイルスなどを取り扱う実験施設の分類です。世界保健機関 (WHO) が制定した Laboratory biosafety manual(日本語訳:実験室バイオセーフティ指針)に基づき、各国で病原体の危険性に応じて4段階のリスクグループが定められており、それに応じた取り扱いレベル(バイオセーフティーレベル)が定められています。SARS-CoV-2の研究は、BSL-3以上の施設ならびに該当レベルの適切な取り扱い方法を習得した実験者に限定されます。BSL-3では、SARS-CoV-2の他、狂犬病ウイルス、結核菌、鳥インフルエンザウイルスなどの取り扱いが可能となります。

実験室バイオセーフティ指針(WHO 第3版)https://www.who.int/csr/resources/publications/biosafety/Biosafety3_j.pdf?ua=1