このたび、以下記載の2件の研究課題が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の臨床研究・治験推進研究事業「患者のニーズに応える医薬品開発に資する臨床研究・治験の推進」に採択されましたのでお知らせいたします。

【採択課題1】

研究開発課題

膵癌における免疫チェックポイント阻害感受性増強のための間質コンディショニング法の開発

研究開発代表者

名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座(消化器内科学分野)川嶋啓揮教授

採択カテゴリー

2-1. 既に作成済みのプロトコールに基づいて実施する臨床研究・医師主導治験の推進【実施(ステップ2)】 ①特定臨床研究の実施

【採択課題2】

研究開発課題

尿路上皮がんに対する合成レチノイドAM80と免疫チェックポイント阻害剤併用療法の医師主導治験のためのプロトコール作成

研究開発代表者

名古屋大学大学院医学系研究科病態外科学講座(泌尿器内科学分野)大脇貴之医員

採択カテゴリー

1. 臨床研究・医師主導治験のプロトコール作成に関する研究【準備(ステップ1)】

今回採択された臨床研究・医師主導治験では、革新的な治療法として当社連結子会社のテムリック株式会社(以下「テムリック」)が権利を有するがん微小環境に作用するタミバロテン(AM80)が使用されます。当社およびテムリックは、治験薬の提供を行うとともに、治験薬の安全性情報の入手と提供等を行います。

 

膵がんおよび尿路上皮がんは予後が悪いがんであり、予後不良の原因として早期発見の難しさとともに抗がん剤抵抗性があげられます。最近、この抗がん剤抵抗性が、がん周辺の微小環境を形成するがん関連線維芽細胞(CAF)~{※1}を主な構成要素とする間質~{※2}により引き起こされていることが注目されています。

 

CAFにはがん促進性の細胞(がんの味方)とがん抑制性の細胞(がんの敵)の両者が存在する可能性が報告されています。これまでにがん抑制性CAFの特異的機能マーカーとしてMeflin(メフリン)~{※3}分子が同定されており、タミバロテンがメフリン遺伝子の発現を増強し、がん促進性CAFをがん抑制性CAFに変換させる作用を持つこと、さらには免疫チェックポイント阻害剤~{※4}(以下「ICI」)の奏効率とCAFにおけるメフリン遺伝子の発現が相関することが見出されてきました。

名古屋大学医学系研究科腫瘍病理学の榎本篤教授らは、モデル動物等を用いた研究において、ICIの投与前のタミバロテン投与によって、がん促進性CAFががん抑制性CAFに初期化された結果として間質が軟化し、加えて腫瘍免疫の調節が起こることで、ICIの効果が増強されることを見出しております。これにより、膵がんおよび尿路上皮がんにおける抗がん剤治療の最大のボトルネックである抗がん剤抵抗性を改善することが期待されております。

 

当社およびテムリックは、これらの臨床研究・医師主導治験にできる限りの協力を行うとともに、AM80の新たながん微小環境の形質転換作用が抗がん剤効果増強に一石を投じることを期待し、両プロジェクトを含めタミバロテンの事業価値最大化に向けた各種施策を検討し実行してまいります。

 

以 上

〔ご参考〕

採択結果につきましては、AMEDのホームページをご覧ください。

令和5年度 「令和5年度 「臨床研究・治験推進研究事業(1次公募)」の採択課題について(2023年2月28日公開)

〔用語解説〕

※1 がん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast:CAF):がん間質を構成する線維芽細胞であり、がん細胞の悪性化(増殖、浸潤、転移)を促進するさまざまな因子の産生に関わることが報告されています。

※2 間質:がん細胞を取り囲むがん細胞以外の領域のことです。

※3 Meflin(メフリン):名古屋大学医学系研究科腫瘍病理学の榎本 篤教授らの研究チームが、未分化な間葉系幹細胞(骨、軟骨、脂肪組織などへの多分化能を有する細胞)および線維芽細胞の特異的マーカーとして同定したタンパク質です。

※4 免疫チェックポイント阻害剤:がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みに働きかけ、免疫細胞の力を回復させることで効果を発揮する薬剤です。

〔研究開発担当者(※当社関係者のみ抜粋)〕

ラクオリア創薬株式会社 創薬研究部門 須軽英仁

テムリック株式会社 相談役 浴本久雄