このたび、当社が創薬研究を進めているTRPV4※1拮抗薬(化合物コード:RQ-00317310)に関する論文(以下「本論文」)がExperimental Eye Research誌に掲載されましたので、お知らせいたします。

 

当社は、2016年から岐阜薬科大学(本部:岐阜県岐阜市、学長:原 英彰)との間で眼疾患に関する共同研究を実施中であり、2021年4月には、岐阜薬科大学に共同研究講座を設置いたしました。本論文は、岐阜薬科大学薬効解析学研究室 嶋澤 雅光教授らの研究グループと当社が実施した共同研究の成果に基づくものです。

 

本論文のポイント:

  • 網膜浮腫や虚血を伴う網膜静脈閉塞症(RVO)※2をはじめとする網膜疾患においては、既存の治療法では医療ニーズが満たされておらず、新たな治療薬が求められています。
  • 網膜浮腫や虚血を伴うマウスRVOモデルの網膜において、TRPV4の発現増加がみられました。
  • 当社が創成した新規TRPV4阻害剤であるRQ-00317310をマウスRVOモデルに硝子体内投与※3したところ、網膜浮腫や虚血が改善されました。
  • 網膜疾患に見られる網膜浮腫や虚血は網膜血管のバリア機能異常が一因と考えられておりますが、RQ-00317310の効果はヒト網膜血管細胞のバリア機能異常を改善しました。
  • 本研究の成果から、TRPV4を標的とした新規治療薬が、網膜疾患における網膜血管障害の新たな治療オプションとなる可能性が示唆されます。

 

現在、当社は前臨床段階への移行を目指し、RQ-00317310をはじめとする一連の化合物を用いた創薬研究を進めております。当社は今後も、本創薬研究プログラムのさらなる価値向上に努めるとともに、当社発の新薬の一刻も早い上市による医療への貢献を目指してまいります。

 

〔今回の発表論文〕
今回発表された論文は以下のとおりです。

Anri Nishinaka , Miruto Tanaka , Kentaro Ohara , Eiji Sugaru , Yuji Shishido , Akemi Sugiura , Yukiko Moriguchi , Amane Toui , Shinsuke Nakamura , Kaoru Shimada , Shuzo Watanabe , Hideaki Hara , Masamitsu Shimazawa
"TRPV4 channels promote vascular permeability in retinal vascular disease"
Experimental Eye Research 228: 109405 (2023).
https://doi.org/10.1016/j.exer.2023.109405

 

〔用語解説〕
※1 TRPV4:TRPV4(正式名称:transient receptor potential vanilloid 4)は温度感受性イオンチャネルの一つで、体温付近の温かい温度、浸透圧変化、力学的な変形によって活性化されることから、環境センサーとしての役割が注目されており、様々な疾患における関連が報告されています。

※2 網膜静脈閉塞症:網膜の静脈が詰まって血液が流れなくなる疾患です。糖尿病性網膜症と並び、眼底出血を起こす代表的な原因の一つであり、高血圧、高脂血症等により発症リスクが高まるとされています。

※3 硝子体内投与:硝子体とは眼球の大部分を示す無色透明のゼリー状のものです。眼球をカメラに例えるとレンズの役割をしている水晶体の後ろに接して眼球に入ってくる光を屈折させてセンサーにあたる網膜に届けるとともに、眼球の形を保つ役割をしています。硝子体内投与は、眼球の白目部分に針を刺して薬液を直接注入する治療方法で、加齢黄斑変性症等の適応疾患に対する抗VEGF療法で広く用いられるようになりました。

以上